この日の東京はゲリラ豪雨。家を出るときは止んでいたが。
旅の始まりは臨時夜行快速【ムーンライトながら91号】なのだが、乗るときにちょっと工夫することに。
夜行列車に乗る場合、青春18きっぷは日付が変わる駅から有効になる。当該列車は046停車の小田原で日付が変わるので、東京から乗るなら小田原までの¥1450を別払いするか、18きっぷ1日分を使うことになる(1日分の値段を算出すると¥2250になるが、5日分のトータルで帳尻が合えばいいという考えもある)。
ここでルートを工夫すると多少お金を浮かすことが出来る。すぐに思いつくのは、小田原まで小田急で行くことだ。新宿〜小田原は¥850。¥600の差額が出て指定席券の分以上は安上がりになる。しかしこれで満足するのはまだ甘い。時刻表を調べれば、東海道線藤沢を001に出発する普通小田原行きがあって、小田原で【ムーンライトながら91号】に乗り継げるのだ。小田急で新宿〜藤沢の料金は¥570。このコースを使えば¥880得するのである。
というわけで副都心線で出発。明治神宮前で千代田線に乗り換え、代々木上原から小田急快速。完全な通勤電車で旅情どころではない。相模大野で各停片瀬江ノ島行きに乗り、藤沢。
2353発の電車が出ると、改札で8/6の日付を入れて貰う。こんな酔狂な乗り方をするのはわたしだけだと思っていたが、ほかにも複数いたので、ちょっと驚いてしまった。
終点小田原着。【ムーンライトながら91号】は、5分の待ち合わせで同じホームにやってくる。車両は国鉄時代からの183系。車内はほぼ満員。
レギュラー【ムーンライトながら】より早く519に名古屋到着。541発関西本線亀山行きに乗る。この区間なら去年も今年の春も乗ったので、どうということもない。
亀山から3分の乗り継ぎで伊勢市行きへ。この列車で新宮行きが始発する多気まで直行してもいいのだが、となるとおそらく何もないであろう多気の駅で1時間半も待つことになってしまう。
ということで、津で途中下車してみることにした。県庁所在地だが、今まで降りたことはない。「つ」という世界一短い発音の駅名(ローマ字表記だと"Tsu"で、粟生"Ao"や飯井"Ii"に抜かれてしまう)に惹かれるものが。
とはいってもありきたりな駅である。四日市や桑名のほうがよかったかも。ついでにいえば、【ムーンライトながら91号】を終点の大垣まで乗って養老鉄道で桑名に出るという手もあったな、と。
848多気。紀勢本線は世界遺産に指定された熊野古道と平行している部分があり、駅にはJR東海の「私たちが熊野古道マイスターです」というポスターが。「オレが熊野古道だ」でも言うのか? ちなみに、このあたりはほんとにクマが出るらしい。
939発の新宮行きに乗る。参宮線と別れ、志摩半島の付け根を横切る。
車窓に海が見えてきて、紀伊長島。まだ三重県だがここから紀伊の国。ここを過ぎると海がちらほらと見えてくる。リアス式海岸で入り江の一番奥まったところに集落があり、路線はトンネルとトンネルの間に駅があるような状態になる。
熊野市を過ぎた辺りで眠くなる。ボックスシートを占領出来るときに一番眠りやすいポーズである、足を投げ出して上半身を直角に横たえる"L"の字になって眠ってしまった。
1338新宮着。ここから和歌山県、JR西日本の管内だ。
かつて天王寺から出ていた普通夜行の終着駅である。寝台車を連結していた時代には【南紀】【はやたま】という愛称がついていて、天王寺から新宮を経由して亀山、名古屋まで行っていた。寝台車が無くなって名無しになり、新宮止まりになってからは、「磯釣り列車」などとも呼ばれたが、90年代に消えてしまった。わたしは何度か乗ったことがあり、紀勢本線といえば新宮で朝を迎えて亀山・名古屋方面に、というルートばかり辿っていた。
次の紀伊田辺行きが発車するまで1時間半もあるのだ。とりあえずはこの辺で一風呂浴びて、夜行からの汗を流したかった。
銭湯を探して街をさまよっていると、道沿いに新古書店を発見し、つい足が向いてしまう。¥100均一棚にあった本を買ってしまった。久美沙織『コバルト創世記』(本の雑誌社)。図書館で借りて読んだことはあるが。
さらに歩いても銭湯は見あたらない。炎天下で汗がだらだら流れてもう限界。アドエスで場所を検索すると、歩いてきた方向と反対側にあった。戻って15分ほど歩いてたどり着く。スチームバスなどもある町の銭湯で¥390。
駅へ戻ると、以前早朝にモーニングを食べた喫茶店は店じまいしていた。
紀伊田辺行きは、なんと2両編成のロングシート車。おいおい……。
車窓の風景は一転して海岸沿いになる。紀伊勝浦、鯨と落合記念館の町太地、そして本州最南端の串本と、路線は紀伊半島の突端部にさしかかる。
紀伊田辺着。5分の待ち時間で御坊行きに接続。かつて東海道、山陽本線の新快速で使われていた117系3両編成。都落ちもいいところですな。
御坊からは「日本一短い」私鉄、紀州鉄道(路線距離では千葉県の芝山鉄道の方が短いが、実質的に京成東成田線の末端部と一体化している)が出ている。隣のホームに単行のディーゼルカーが入線していた。
初島を過ぎると車窓に精油所の灯りが。
和歌山着。和歌山駅周辺は以前2ヶ月ほど仕事で滞在していて、勝手知ったるところだ。乗り継ぎ時間は25分。駅前の餃子の王将へダッシュ。炒飯を猛スピードで平らげて戻り、和歌山始発の【紀州路快速】に乗る。
ここまで順調に進んでいたが、天王寺駅を前にして足止め。5分しかない大阪駅での乗り継ぎ時間が心配になる。ちょうど5分遅れで天王寺駅を出たが、普段停まらない駅にも臨時停車すると言っている。どうなるんだよ……。
大阪へは4分遅れで到着。【ムーンライト九州】の編成が隣のホームに入線しているのが見える。
ホームに駆け上がると、まだ止まっていた。しかしドアは閉まっている。「乗ります!」と叫んだとき、列車は無情にも動き出してしまった。
こうなったら新幹線で追っかけるしかない。新大阪まで行くが、しかしその新幹線も大雨の影響でダイヤが乱れまくっているらしい。
追いつく一番近いポイントは姫路。しかし新大阪打ち切りの列車も多いようだ。ぎりぎり追いついても、また大阪駅のような羽目にあうのはばかばかしい。岡山まで買うことに。ビジネスホテル1泊分の臨時出費や……orz。
30分遅れの【のぞみ87号】姫路行きが入線。N700系初体験がこんな形とは。遅延の影響か、結構空いていた。自由席でもコンセントがある。やはり新幹線はいいな。このまま博多まで行きたかった……。
20分ほどで終点姫路到着。岡山まで切符を買ってしまったのだが、ここで【ムーンライト九州】をつかまえられそうなので改札を出る。
さっき乗り逃した【ムーンライト九州】は5分遅れでやって来た。
【ムーンライト九州】が登場したのは90年。青春18きっぷで乗車できる快速(種別は「普通列車」)ながら、スキー客向け臨時列車【シュプール号】用客車を使用した編成には展望車まであった(現在は連結されていない)。夜行列車の退潮が始まっていた時期に登場した当初は「ニュータイプ夜行」ともてはやされたが、やはり長期低落傾向にあるようだ。以前は9月まで運行されていたのに、現在では8/1〜8/18まで。姉妹列車の【ムーンライト山陽】や【ムーンライト八重垣】はもう運行されていないので、本列車もいつまで保つのか不安である。
わたしはこれまで2回乗ったことがある。学生時代の話で、当時は編成の半分は自由席だったので、ちょっと早めに京都駅(当時の始発駅)のホームに並べば席にありつくことが出来た。
席はほぼ満員。記憶があるのは福山のあたりまで。
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