当日。
5時前、寝不足のまま家を出る。雨。駅までの道のりを歩いていると、靴下が濡れてしまった。どうも靴に穴が開いているようだ。天気予報によれば、週末にかけての道中の天候は余りよろしくないようだ。浸水を我慢して古い靴で通すか、それとも靴擦れができる危険を冒して新しい靴を求めるか。悩ましい。
地下鉄を始発で出発。有楽町で山手線に乗り換え浜松町からモノレール。大井競馬場の駅に停まると、朝の散歩に出る競走馬の群れが見える。
沖止めで乗りこんだ635発スカイマーク001便福岡行きは、滑走路が混んでいるとかでかなり待たされ、離陸したのは7時近く。
福岡まで秋雨前線に沿って飛行するかたちになるので、なかなかシートベルト着用のサインが消えない。これでは写真も撮れないしiPodで音楽も聴けない。
窓の外は雲海。乱気流でしばしば大きく揺れる。飛行中はずっとこのままか、とまで覚悟したが、名古屋が近くなってようやくサインが消える。前回乗ったときはサービスだった機内での飲み物は「販売」になっていた。事前に買っておいて正解。
近畿地方に達すると、ようやく下界が見えるようになった。
機は定刻より5分遅れて福岡空港着陸。地下には市営地下鉄が直截乗り入れていて、博多まで2駅。しかし到着ロビーから駅までは相当の距離があるのだ。
入線している姪浜行きに乗る。博多駅や中心街の天神、ヤフードームの最寄り駅である唐人町を過ぎ、地上に出て姪浜。市営地下鉄はここまで。JRの切符を買うために一旦ここで改札を出る。みどりの窓口で、唐津、佐賀経由鳥栖行きの切符を買う……はずだったが、姪浜は地下鉄の駅なのでみどりの窓口はなく、駅併設のJR九州の旅行代理店「ジョイロード」の窓口で売っている。その窓口は10時からの営業だった。しかたなく唐津までの切符を自動販売機で買う。¥850。
筑肥線は奇妙な姿をしている。路線図で観ると、姪浜〜唐津と山本〜伊万里で分断され、東西の筑肥線は唐津線を挟んで、断層のように食い違っている。時刻表巻頭の路線図では、筑肥線は幹線を表す黒、唐津線は地方交通線の青で描かれているので、一層奇妙だ。
さて、全線完乗の大先達、宮脇俊三『時刻表2万キロ』河出文庫版P55に、1975年時点の唐津近辺の図が載っている。その図を見ると、博多から伸びている筑肥線は、東唐津駅でスイッチバックして松浦川の東岸を南下、途中鏡、久里という駅を経由して山本駅へ至っている。松浦川の西岸には唐津線が西唐津まで伸び、唐津線と筑肥線は、松浦川を挟んで平行している。
同書中で宮脇氏はこの線形を利用してある裏技を目論むのだが、それは同書を読んで頂きたい。
そう、筑肥線ははじめからこの姿ではなかった。開業当時は博多駅〜伊万里間をストレートに結ぶ路線だったのだ。
現在の姿になったのは、電化して地下鉄に乗り入れした1983年のことである。当時の唐津駅は久保田、佐賀に通じる唐津線のみの駅で、市の中心部にありながら博多へ直通の列車がなかった。これでは不便なので、電化する際に新線を敷設して唐津へ直通させ、東唐津駅のスイッチバックを解消すると同時に東唐津〜山本間を廃止して。筑肥線の電車は唐津線の西唐津まで乗り入れることになった。唐津〜西唐津は唐津線唯一の電化区間。
当初、唐津〜山本は唐津線と線路を共有していた(「二重戸籍」という)。JR発足と同時にこの区間は唐津線のみになり、筑肥線は名実共に分断されてしまったのだ。運行系統で見ると、姪浜(地下鉄)〜西唐津の電車区間と西唐津〜伊万里のディーゼルカー運行区間、というかたちになっている。
地下鉄に乗り入れるのと同時に、並行する姪浜〜博多間も廃止された。JRしか描いていない路線図で見ると、唐津線から行き止まりのふたつの線が互い違いに伸びているようである。
この筑肥線に乗ったのは、学生時代の92年。車内で乗客が読んでいたスポーツ新聞で「ダイエー、門田引退」という見出しを見たように記憶している。姪浜→西唐津→伊万里→松浦鉄道というルートを取ったため、唐津線の山本以南は未乗のまま残ってしまった。
それはさておき、姪浜。切符を買ってホームに戻ったらタッチの差で西唐津行きを逃してしまい、次の電車は途中の筑前前原止まり。終点まで行って快速列車を待っていたら「地下鉄線内でトラブルのため快速は運休」とのアナウンス。各停で唐津まで行く羽目に。
唐津に近づくにつれて車窓がよくなる。玄界灘が広がり、「虹ノ松原」を通って唐津着。
唐津では改札を一旦降りて鳥栖行きの切符を別に買う羽目になった。唐津線経由で¥1430。つまりトータルでは¥850+¥1430+¥1760+¥220=¥4260。結局、通しの切符よりも高くなるではないか。策士、策に溺れたか……orz。
未乗区間は山本〜久保田。といっても、人名のようでどこを通っているのかピンと来ない。淡々と平地を進む路線である。
久保田で長崎本線と合流。JR九州全線完乗。811系電車に佐賀で乗り換え。鳥栖まで。
ジャンクションの鳥栖は、まだ佐賀県である。かつて操車場があった駅周辺の土地には、サガン鳥栖の本拠地であるスタジアムが建っている。
改札を出て門司までの切符を求め、スタンドで「焼売(シャオマイ)弁当」を買う。¥700。羽犬塚発門司港行き快速が入ってきた。あとは門司までそのまま乗っていけばいい。
この区間は日本一の特急街道。熊本方面の【リレーつばめ】【有明】、長崎、佐世保方面からやってくる【かもめ】【みどり】【ハウステンボス】、博多からは大分行き【ソニック】、他にも運行されている。
博多を過ぎ、香椎、古賀。この辺りは1月も通った区間。筑豊本線が交差する折尾駅は、秋葉原のような垂直交差駅である。さらにちょっと離れた別線にもホームが造られ、複雑怪奇な形に。この駅は未だに駅弁の立ち売りがいることでも有名。「かしわめし」の食べ比べも面白いと思ったが、さすがに買う時間はなかった。
小倉で6分停車。駅名表を撮りにホームに降りると、キヨスクの朝日新聞に大きな見出しで「辞意」。思わず買って車内で広げてみたら、「安倍首相辞意」だった。車内では号外を手にしている乗客もいる。
門司で乗り換え、ここでも改札を出て下関までの切符を買う。門司駅の駅名表は、関門海峡をくぐる電車が図案になっているが、このタイプの電車は関門トンネルを運行しないんだがなあ……。
下関着。みどりの窓口で予約しておいた切符を受け取って精算。ついでに14日に乗る【やくも】の自由席特急券を求める。ここで買えば半額だ。
宇部新川行きの電車は発車寸前。宇部から宇部線に乗り入れる。小野田線が分岐する居能で下車。
客の大半は下校の高校生である。
関東の人間にとって宇部、小野田といえば「セメント」だろう。その名の通り、セメントの原料である石灰石や宇部炭坑の石炭を運搬するために造られた路線である。
雀田着。長門本山行きの単行はすでに入線している。車内では5人ほどの乗客がいた。ひとりは女子高生。残りも地元民風で、物好きはわたしだけのようだ。
2駅めが終点の長門本山。
小野田線は本線+行き止まりの短い枝線という構成、海沿いの工業地帯を走り、平日朝夕重点のダイヤで運行され、近年まで旧型電車が運用されていたこと、など首都圏の鶴見線と共通点が多い。この長門本山駅は、さしずめ海芝浦か。
行き止まりの目の前は道路。道路の向かいは原っぱ。その先は海。
乗ってきた電車で引き返し、雀田で乗り換えて残りの小野田線を完乗。小野田から山陽本線で下関まで戻る。
そういや下関って、安倍総理の選挙区らしい。しかし、「ポスト安倍の最有力候補は麻生」との観測でアニメ関連株が急騰したというニュースには大笑いしたなあ。
このまま下関で宿を取る。ネットカフェにしようかと思ったが、夏場は毎日風呂に入って服を着替えないとアトピーが悪化する。結局、駅近くにあるカプセルホテルに宿を取る。¥2500。
施設はめちゃくちゃ古くて、風呂は家庭用の風呂そのもの。掃除が行き届いていなくて、タイルの目地が真っ黒なのには鳥肌が立つ。カプセル内にコンセントがあったのはよかったが。
(この日の初乗車区間 唐津線山本〜久保田 小野田線小野田〜居能、雀田〜長門本山)
テーマ : 鉄道旅行 - ジャンル : 旅行
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